1.1.1. XMLの祖先ーSGMLとHTML

 XML は白紙の状態から開発された訳ではありません。当時既に一般的な技術として知られていたHTML、そしてHTML の大元であるSGML[1]を礎に議論を重ねて作り出されたものです。HTML でもSGML でもなく第3 の規格をあらたに開発したということは、それらに対する不満や問題意識があったからと考えることができます。では一体どのような問題があったのでしょうか。代表的と考えられるものについて取り上げてみます。

SGML(ISO 8879:1986)の問題点

・規格が複雑なため、対応ソフトウェアの実装(開発)が困難

 どれほど便利で優れた規格であろうとも、実際に利用できない(利用範囲が限られる)とあっては本来の価値を発揮することはできません。その点では、SGML 対応アプリケーションやライブラリがごく限られたものしかなかったという事実は、普及を阻害する致命的な要因であったと言えます。
 また言うまでもなく、規格の複雑さは理解を妨げる要因でもあります。実際には、SGMLを用いて文書を記述する際に規格のすべてを把握している必要性はないのですが、「SGMLは難解な規格」というイメージが先行して、普及の足枷となっていたことも事実です。

HTML の問題点

タグ集合が一意であり、拡張性がない

 知っての通り、HTML はWorldWideWeb(WWW)という限定された目的のために開発された言語です。このため、BtoB(Business to Business)やBtoC(Business to Consumer)などに代表されるデータ交換用途に用いるには、限られたタグ集合しか持たず、またタグ集合を拡張することのできないHTML では機能不足であることが明白でした。

[1] 厳密に言えば、HTML はSGML を応用して開発された言語であり、このような言語を一般にSGML 応用(またはSGML アプリケーション)と呼びます。

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