「CALS/EC」とは「CALS」が「Commerce At Light Speed(素早い商取引)」の略で、「EC」が「Electric Commerce(電子商取引)」の略です。
「CALS」は、1993年に提案された「Continuous Acquisition and Life−cycle Support(取引きと製品サイクルの一貫した支援)」が原点です。日本では、「生産・調達・運用支援統合情報システム」と訳されています。CALSの定義は、1994年にCALS会議で「Commerce At Light Speed」が新たに提案され、ISOによって採用されました。
「EC」は、「組織間のデータ交換を情報通信技術を利用して行い、ビジネスを誘導するもの」と定義されています。多様な経済活動をネットワークを駆使して行う「EC」は各国で推進され、今後は、グローバルEC推進のための国際議論が活発になると思われます。日本でも基礎開発と実証を終え、今は実用化のための開発を行っています。
「CALS」は1985年にアメリカ軍が物資を補給するために、早く安く調達・補給し、生産できるようにアメリカ国防総省で考えられたものでした。日米欧の企業や政府は、逸早く産業をCALSに対応させることによって、CALSが生み出すはずの経済利益や業務革新の効果を獲得したいと望みました。今では、世界中の企業がネットワーク上に新しくバーチャルエンタープライズ(VE)を形成して、ビジネスモデルの標準化とデータ共有を目指しています。この動きを受けて、ISOではCALS により「2010年の国際的な自由貿易における条件を整備する」として次の5つの改善目標をあげています。
- ビジネスプロセスの標準化
- 先進技術の適用
- 構造化技術の採用
- 情報共有環境の構築
- 国際規格の採用
健全な自由貿易が維持されることは、日本の死活にかかわる程、重要なことです。企業間の垣根が取り払われて、世界中で自由な取引きができるようになることは、より躍動感に富んだ新世紀に望ましいパラダイムシフトであると言えます。
日本で開催された「CALS EXPO International ’98」の「ISO HLSGC フォーラム」でアメリカのチューズブロー氏が次のように日本への警告をコメントしています。即ち…
「21世紀の知識駆動型市場では日本文化は通用しない。」
…21世紀の知識駆動型市場とはどのようなものになるのでしょうか。日本文化は、彼にのような印象を与えたのでしょうか。いずれにせよ、知識情報が世界の死命を制する鍵であることは確かなことです。
彼の警告に謙虚に耳を傾ける必要があります。高い品質の製品を生産できるとしても国際標準の品質管理システムである「ISO 9000」に準拠することが求められていますし、環境管理システムは「ISO 14000」に適合することが求められています。今は、国際社会の公的な規格をよく研究し、将来、よりグローバルな市場で競争し、国際社会に貢献することが必要になります。
これからの私たちは国際標準規格に積極的に対応しつつ、世界のために、より良い国際標準規格を世界に対して主張していく姿勢こそを最も必要としています。私たちがそういう姿勢でいてこそ、本当の意味での良い世界標準がこの世界に生まれてくるのではないでしょうか。
CALSが推奨しているのが、文書交換のための国際標準規格である「SGML」です。CALSは、1990年に文書情報の標準化を目的として「SGML」を採用しています。この「SGML」規格に則った「SGML文書」を印刷し、表示するための国際標準規格が「DSSSL」です。
1994年に日本電子工業振興教会(JEIDA)が開いた「CALS Japan」では、CALSを紹介し、普及するためのキャッチフレーズ「CALSは紙を使わないビジネスシステム」が大きく掲げられました。このフレーズと「DSSSL」規格は矛盾するのでしょうか。いいえ、「DSSSL」規格は、「読みやすい文書」を読みたい、という誰もが望んでいることを満たすための規格です。20世紀末までに人類が獲得した最も読みやすい文書は「紙」に印刷されたものでした。
DSSSL規格は、「紙および電子媒体のためにフォーマット処理する」ことが目標です。今後は、電子媒体への出力も重要なテーマとして注目を集め、論議が活発になっていくと考えられています。無駄なく印刷し、貴重な森林資源を浪費しないためにも、電子媒体で内容を確認してから印刷する、という業務の流れが求められています。DSSSLはCALSが目指している「無駄な紙を使わないシステム」を実現するための規格であり、プラットフォームに依存しない表示品質をもたせることが可能です。