4.2.2. 和文組版特有の特徴

(a) 約物に関する規則

 日本語の文章は、句読点の後やかっこの前後に区切り目があります。欧文は、それに加えて語と語の間にも区切り目があり、ここにスペースを入れます。和文には、この語間というがありません。そこで、行分割の際には、字と字の間を分割することになります。
 和文組版では、文章の区切り目である句読点やその他の記号類の箇所に入れるスペースの量が決められています。この記号類を総称して約物といいます。約物に関しては、「日本語文書の行組版方法」に詳しい規則があります。以下にその内容を紹介します。

<1>文字の大きさ

 全角組みの場合、文字の大きさ(横組みの場合は字幅、縦組みの場合は字の高さ)を次のように呼びます。

  • 全角:1文字分の大きさ
  • 二分(半角):1文字の2分の1
  • 三分:1文字の3分の1
  • 四分:1文字の4分の1
  • 六分:1文字の6分の1
  • 八分:1文字の8分の1

 和文組版用語では、スペースのことをアキといい、スペースを入れない組み方のことをベタ組みといいます。例えば、1文字の半分の大きさのスペースを二分アキといいます。

<2>約物の大きさ

<半角の約物>

  • 始めかっこ類’”( [ { < 「『 【
  • 終わりかっこ類’”) ] } > 」』】、,
  • 中点類・:;
  • 句点類。.

 「日本語文書の行組版方法」では、読点(、, )は終わりかっこ類に分類されています。

<全角の約物>

  • 区切り約物疑問符 ? 感嘆符 !

<3>約物の前後のスペース

  • 始めかっこ類の前:二分アキ
  • 終わりかっこ類の後:二分アキ
  • 句点類の後:二分アキ
  • 中点類の前後:四分アキ
  • 区切り約物の後:ベタ組み(全角アキとするルールも他にある)

<4>連続する約物(多重約物)の間に入れるスペース

  • 終わりかっこ類の次に中点類が続く場合:四分アキ
  • 中点類の次に始めかっこ類が続く場合:四分アキ
  • 終わりかっこ類の次に句点類が続く場合:ベタ組み
  • 句点類の次に終わりかっこ類が続く場合:ベタ組み
  • 終わりかっこ類の次に始めかっこ類が続く場合:二分アキ
  • 始めかっこ類または終わりかっこ類が続く場合:ベタ組み
  • 句点類の次に始めかっこ類が続く場合:二分アキ

<5>行末での配置

多重約物の間のスペース

  • 行末の終わりかっこ類の後:ベタ組み(場合によっては二分アキ)
  • 行末の中点類の後:ベタ組み(場合によっては四分アキ)

<6>行頭での配置

  • 行頭の始めかっこ類の前:ベタ組み(場合によっては二分アキ)
    (他に全角アキ、全角二分アキとする場合もある)

(b) 行分割に関する規則

 前節で挙げた約物についての決まりを前提として、行分割の禁則が定められています。主な禁則は行末禁則と行頭禁則です。行末禁則とは、行末に置いてはならない文字を定めたものです。行頭禁則とは行頭に置いてはならない文字を定めたものです。

<1>行末禁則

 行末禁則とは、行末に置いてはならない文字を定めたものです。つまり、この文字の後に行分割点があってはならないということです。

  • 行末禁則対象:始めかっこ類

 始めかっこ類とその後の文字は結びつきが強いため、この字間を分割してはなりません。始めかっこ類が行末に置かれると、それだけが孤立してしまい、かっこが内容をくくっていることが分かりにくくなります。

<2>行頭禁則

 行頭禁則とは、行頭に置いてはならない文字を定めたものです。この文字の前に行分割点があってはなりません。

  • 行頭禁則対象:
    • 終わりかっこ類
    • 句点類
    • 中点類
    • 区切り約物
    • 行頭禁則和字
    • 拗促音   ゃ ゅ ょ っ ャ ュ ョ ッ
    • 仮名の小字 ぁ ぃ ぅ ぇ ぉ ァ ィ ゥ ェ ォ
    • 音引き   ー
    • 繰り返し記号 々
  •  例えば、句点類は文章の終わりを示すものです。それが文章から分割されて行頭に置かれると、文章がどこで終わっているかが分かりにくくなります。また、拗促音や音引きは、前の文字と2つで1つの音を表すものなので、分割すると読みにくくなります。そのためこれらの文字は行頭に置くことを禁止されています。

     行頭禁則和字については、場合によっては行頭に置くことを許容することがあります。

    <3>分離禁止

     分離禁止とは、特定の文字と文字の間や記号の途中など、離してはならない場所を定めたものです。分離禁止対象は、行分割やスペースによって離すことを禁止されています。

    • 分離禁止対象:
      • 分離禁止文字(ダーシュ(-)、リーダ(…))と前後の文字との間
      • 二倍物の約物(二倍ダーシュ、二倍三点リーダ)の途中と前後の文字との間
      • 前置省略記号(¥ $ £)と後の文字との間 ¥1,000 $500
      • 後置省略記号(%)と前の文字との間     100%
      • 連数字の途中                1,000,000

    <4>禁則処理

     以上に挙げた禁則を処理する方法を説明します。禁則処理とは、行長に合わせて機械的に分割すると、分割点として不適切な箇所が分割されてしまう場合に、別の箇所を分割点とするための処理です。

    <追い込み>

     行中のスペースを詰めて分割点を後にずらす方法です。約物の前後のスペースの他、和欧混植の場合は欧文の語間や和文と欧文の間のスペースも調整に使われます。

    <追い出し>

     行中のスペースに更にスペースを加えて分割点を前にずらす方法です。追い出しは、追い込みで調整しきれない場合に行います。欧文がある場合は欧文の語間や和文と欧文の間にスペースを加えますが、それがない場合は、和文の字間に均等にスペースを加えます。この場合、分離禁止対象の文字間にはスペースを入れません。

    <ぶら下げ組み>

     これは、句点や読点を行頭に置くのを防ぐために、行末に1字分はみ出して置くことです。ぶら下げができるのは句読点のみです。また、欧文組版にはこの組み方はないため、和欧混植の多い横組みでは使わないほうがよいとする説があります。

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