その際に予め準備するものや設計しなければならない事柄のこもごもや詳しい手順については、第5章でやさしく説明していますので、ここでは、スタイルスクリプトを記述する際の前提知識や利用の水準、DSSSLのライブラリについて紹介し、解説しておきます。
スタイルスクリプトを作成するための前提知識は、次の通りです。
<DSSSLスタイルスクリプト作成の前提知識一覧>
- DSSSL処理
- 組版
- 組版要素に対応するDSSSLの流し込みオブジェクト
- SGML
- DSSSLの内部表現であるグローブ(Grove)
- Scheme(式言語)
- Scheme上のDSSSL指定方法(SDQL(標準文書照会言語)、グローブおよび流し込みオブジェクトクラスの操作)
この前提知識一覧を見て「うわっ、大変だ。」と思った方、あなたは正常です。
「こんな物もう充分に知っている。」という方、恐らく、あなたは自信過剰に陥っています。
この一覧は、DSSSLの規格化に多年携わってきた方々が考えた前提知識ですので、初心者としては謙虚に受け止めておくのが無難であると思います。
本書では、DSSSL初心者に必要十分な知識を与えるべく作成されていますので、これらの前提知識について他の書籍に書かれていないことを中心に解説しています。
DSSSLの先駆者たちは、これらの前提知識を必ずしも必要としないでDSSSLを利用できる方策を望んでいました。ネクストソリューション社では、WYSIWYGで結果を確認しながらスタイル指定が可能なDSSSLエディタを企画し設計開発していますので、いつかはもっと手軽にDSSSLの利用ができるようになるかもしれません。また、最近では、DSSSLの先駆者たちによって、DSSSLのライブラリが公表されてきています。
これを用いて、DSSSLの柔軟性を維持したままで、より簡易な指定が可能になってきました。
DSSSL利用者の知識水準に応じて段階的に高度な拡張を可能にするDSSSLの記述パッケージが提供されています。これらを活用することで誰もが簡単にDSSSLを利用できることになってきました。
標準情報「JIS X TR0010日本語組版のDSSSLライブラリ」ではDSSSL利用者の前提知識の水準(Level)に基づく利用形態を分類しています。これを少し嚙み砕いてみました。
<DSSSLの利用水準>
- 水準0.既存スタイル利用
すでに存在するスタイルをそのまま利用する水準。 - 水準1.組版要素の指定変更
スタイルの記述内容を読み理解して、特質の値(パラメータ)を変更できる水準。 - 水準2.DTD対応指定
DTDに対応してスタイル指定を作成できる水準。 - 水準3.ライブラリ作成
他の利用者が再利用できるライブラリを作成できる水準。
全く新しいスタイルを構成し定義できる水準。
上述の標準情報「JIS TR X 0010日本語組版のDSSSLライブラリ」では、主として水準1.の利用形態を対象としたライブラリを提供しています。このライブラリは、日本規格協会から購入することができます。
本書では、水準0.未満から水準1.未満の方を対象にして、最低でも水準1.から水準2.になっていただけるまでの解説に努めています。また、水準3.の方々(=DSSSLの先駆者の方々)までに幅広く話題をご提供できるように努めています。
スタイルスクリプトを作成できるようになるコツは、いくつかあります。
- 今までの自分の知識や経験に囚われずに、新しい知識をすなおに吸収すること。
- 誰かが書いたスタイル指定の書き方をそのまままねして自分だけで何度も書くこと。
- 先駆者の技術や考え方に疑問が出てきたら、すぐに結論せずに徹底的に調査し、考え抜いてみること。
- 新しいスタイルを編み出したらライブラリにまとめるよう心がけること。
- 身近な仲間や関心がある方々にできるだけ簡単に伝えること。
そのうちに特に意識しないでも自由に扱えるようになるはずです。