4.5.2. テキストのスタイル指定

 文書の基本的要素であるテキストをフォーマットすることは、組版上でも基本的な処理です。テキストのスタイル指定に使う特質を、表記方向、行揃え、行分割法、禁則、ハイフネーション、フォント、行内領域の配置、インデント、段落の分割に分類して紹介します。

(a) 表記方向

 縦組みか横組みかを決めるのに、特質writing−mode:を使います。

  • writing−mode:
  • デフォルトleft−to−right (横書き 左から右:欧文、日本語の横組み)
  • right−to−left (横書き 右から左:アラビア語ヘブライ語)
  • top−to−bottom (縦書き 上から下:日本語の縦組み)

(b) 行揃え

 段落ごとの行の揃え方は特質quadding:で指定します。

  • quadding:
  • デフォルトstart表記方向で最初に揃える
  • center中央揃え
  • end表記方向で最後に揃える
  • justify両端揃え

 quadding:には、上の4つの他に見開きや段を意識した揃え方を指定する値があります。
 以下の2つはページ列の中に含まれる段落にのみ指定できます。

  • spread−inside見開き内側(綴じ込み側)
  • spread−outside見開き外側

 以下の2つは段集合列の中に含まれる段落にのみ指定できます。

  • page−inside1ページの内側
  • page−outside1ページの外側

行分割法

 テキストは、行に分割されて段落という形でまとめられます。どこで分割するかは特質lines:で指定します。

  • lines:
  • デフォルトwrap 領域の大きさに合わせて分割
  • asis RE(record−end)文字の後でのみ分割
  • asis−wrap RE文字の後で、および領域内におさまるように分割
  • asis−truncate RE文字の後でのみ分割。領域からはみ出した行は切り捨てる
  • none 分割が存在しないとする

(d) 禁則

 行分割のルールには、特定の文字の前や後での行分割を禁じたものがあります。この禁則に従うには、禁則対象とする文字に以下の特質を指定します。

  • break−before−priority:オブジェクトの前での分割優先度
  • break−after−priority:オブジェクトの後での分割優先度

<1>行頭禁則

 行頭禁則対象は、その前での分割を禁止したものです。文字の前での分割優先度を低く設定すれば実現できます。

  • break−before−priority:
  • デフォルト0普通の文字(オブジェクト)の前の分割優先度
  • −1以下行頭禁則文字(オブジェクト)の前の分割優先度

 たとえば、終わりかっこ“)”と音引き“ー”を行頭禁則対象と指定します。行頭禁則和字“ー”は、場合によっては禁則を解除しても良いとされるので、“)”にくらべて、オブジェクトの前の分割優先度を高くします。

  • break−before−priority: −2
  • break−before−priority: −1

<2>行末禁則

 行末禁則対象には、その文字の後の分割優先度を低く指定します。考え方は行頭禁則対象の場合と同じです。

  • break−after−priority:の値
  • デフォルト0(普通の文字(オブジェクト)の後の分割優先度)
  • −1以下(行末禁則文字(オブジェクト)の後の分割優先度)

<3>分離禁止

 分離禁止対象は、前後の文字と離してはならないものなので、break−before−priority:とbreak−after−priority:に−1以下を指定します。

<4>ぶら下げ組み

 行頭の位置に行頭禁則対象である句読点が来た場合は、前の行末にぶら下げる組み方です。ぶら下げ組みをするには、以下の特質を使います。

  • hanging−punct?:
  • デフォルト#f(ぶら下げ組みを許可しない)
  • #t(許可する)
  • punct?:
  • デフォルト#f(ぶら下げ対象文字ではない)
  • #t(ぶら下げ対象文字である)

 たとえば“、”と“。”をぶら下げ組みにする場合、次のように指定します。

  • hanging−punct?:#t(ぶら下げ組みをするparagraphの特質)
  • punct?:#t(characterオブジェクト“、”と“。”の特質)

(e) ハイフネーション

 ハイフネーションに関する指定を行う特質には以下のものがあります。

<1>ハイフネーションを行うかどうか

  • hyphenate?:
  • デフォルト#f(ハイフネーションを許可しない)

<2>ハイフンとして使う文字

  • hyphenation−char:
  • デフォルト#¥-

<3>分割点の制限

  • hyphenation−remain−char−count:前の行に残す文字の最小数
  • hyphenation−push−char−count:次の行に送る文字の最小数
  • デフォルト2

 分割の際に、前の行と後の行にそれぞれ少なくとも何字残すかを指定し、語の分割点を制限します。
 オックスフォードルールには、最小限2文字をその行に残し、最小限3文字を次の行に送るというルールがあります。これは以下の指定で実現できます。

  • hyphenation−remain−char−count:2
  • hyphenation−push−char−count:3

<4>分割点の指定

  • hyphenation−exceptions:分割可能点にハイフン文字を含んだ語のリスト
  • デフォルトlist()(空リスト)

 この特質は、語の分割点を定めた辞書として使います。内容は、分割点にハイフンを含んだ文字列(単語)のリストです。

<5>ハイフネーションの連続の制限

  • hyphenation−ladder−count:ハイフネーション行が連続する最大数
  • デフォルト#f(制限しない)

 ハイフネーションの連続を制限します。欧文組版の3行以上続けてハイフネーションしてはならないというルールは以下の指定で実現できます。

  • hyphenation−ladder−count:2

<6>分割された語の配置

  • hyphenation−keep:分割された語を配置する範囲を指定
  • デフォルト#f (範囲を制限しない)
  • spread (同じ見開き内におさめる)
  • page (同じページ内におさめる)
  • column (同じ段内におさめる)

 右ページの最終行でハイフネーションを行ってはならないというルールを実現するためには、以下の指定で分割された語を同じ見開き内におさめます。

  • hyphenation−keep:’spread

(f) フォント

 フォントに関する特質には以下のものがあります。

<1>フォントファミリー名

  • font−family−name:
  • デフォルトiso−serif (“Times Roman”)
  • iso−sanserif (“Helvetica”)
  • iso−monospace (“Courier”)
  • #f (任意のフォントファミリーを許容)

<2>フォントの重み

  • font-weight:
  • not−applicable(利用不可)
  • ultra−light/extra−light/light/semi−light(細い)
  • デフォルトmedium(中くらいの太さ)
  • semi−bold/bold/extra−bold/ultra−bold(太い)

<3>フォントの傾き

  • font-posture:
  • デフォルトupright (傾斜なし)
  • oblique
  • back−slanted−oblique (左方向に傾斜したoblique)
  • italic
  • back−slanted−italic (左方向に傾斜したitalic)

<4>フォントの構造

  • font-structure:
  • デフォルトsolid(普通の文字)
  • outline(袋文字)

<5>フォントの字幅

  • font−proportionate−width:
  • not−applicable(利用不可)
  • ultra−condensed/extra−condensed/condensed
    /semi−condensed
    (狭い)
  • デフォルトmedium(中くらい)
  • semi−expanded/expanded/extra−expanded
    /ultra−expanded
    (広い)

<6>フォント名

  • font-name:
  • デフォルト#f(任意のフォント名を許容)

 font−name:を指定した場合、font−family−name:からfont−proportionate−width:までの5つの特質は指定する必要がありません。

<7>フォントサイズ

  • font-size:
  • デフォルト10pt

行内領域の配置

 段落内に行内領域を配置する際には、以下の特質を使います。

<1>行間

  • line−spacing:行送り量
  • デフォルト12pt
  • min−leading:行間の最小スペース
  • デフォルト自動調整
  • line−spacing−priority:行間調整に使うスペースの優先度
  • デフォルト0

 この3つは配置パスの位置決めに使います。つまり、行間を決定します。

<2>行領域の大きさ

  • min−pre−line−spacing:配置パスの上(右)にある行領域サイズの最小値
  • min−post−line−spacing:配置パスの下(左)にある行領域サイズの最小値
  • デフォルトフォント依存(フォントの大きさによる)

 行領域の大きさを、配置パスからの距離で指定します。

<3>字間の制限>

  • justify−glyph−space−max−add:
  • デフォルト0pt
  • justify−glyph−space−max−remove:
  • デフォルト0pt

 字間に加えるスペースと字間から除くスペースの量の上限値を指定するものです。両端揃えのための調整の際に、字間が空きすぎたり詰まりすぎたりしないように制限します。

<4>シフト

  • position−point−shift:
  • デフォルト0pt

 行内領域の位置決め点をずらすことによって、文字または文字列を横組みでは上下、縦組みでは左右に移動することができます。この特質によって和欧混植に必要なベースラインシフトが実現できます。

(h) インデント

<1>すべての行のインデント

  • start−indent:段落の行頭側のインデント
  • end−indent:段落の行末側のインデント
  • デフォルト0pt

 段落全体のインデント量を指定します。欧文組版のところで説明したFlush−and−hangスタイルに使います。

<2>第1行のインデント

  • first−line−start−indent:段落の第1行の行頭インデント
  • デフォルト0pt

 段落の第1行の行頭インデント量を指定します。マイナス値を指定してアウトデントにすることもできます。

(i) 段落の分割

 段落の分割による孤立行を防ぐためには、以下の特質を使います。

<1>widowの制限

  • widow−count:段落が分割された場合、次の領域の先頭にはみ出す行の最小数
  • デフォルト2

 最低何行をはみ出させるかを指定し、widowを防ぎます。

<2>orphanの制限

  • orphan−count:段落が分割された場合、その領域の最後に残る行の最小数
  • デフォルト2

 最低何行を残すかを指定し、orphanを防ぎます。

<3>分割の制限

  • break−before:オブジェクトの前で分割が生じる(領域が開始する)
  • break−after:オブジェクトの後で分割が生じる(領域が終了する)
  • デフォルト#f (制限なし)
  • page (ページ)
  • page−region (ページ区域)
  • column (段)
  • column−set (段集合)

 オブジェクトを指定した領域内におさめ、不適切な分割を防ぎます。
 たとえば段落に対して次のような指定を行うと、ページ末の分割によるwidowを無くすことができます。

  • widow−count: 2(段落が次ページにはみ出すとき、少なくとも2行が必要)

 または

  • break−after: ’page(段落の終了後に改ページが生じる)

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