4.3.3. 不適切な分割(Bad breaks)を避けるための処理

(a) 行末の調整(主に両端揃えの場合)

 行分割レベルでの不適切な分割とは、分割によって語間が空きすぎたり詰まりすぎたりしている場合や、語を分割する位置が不適切である場合です。

<1>語間のスペース量を増減して調整する

 先に述べた通り、欧文組版では語間のスペース量の増減によって行末を揃えます。1行ごとに調整するため、語間のスペース量は行ごとに異なります。行長が短い場合や長い単語がある場合は、行末を揃えることによって語間が極端に空いたり詰まったりすることがあります。そうならないように、語間のスペース量の上限値と下限値を設定しておきます。

<2>語の分割(ハイフネーション)を行う

 行末を揃えようとすると語間のスペース量が上限値または下限値を越えてしまう場合、語の分割を行います。行分割のところでも述べたとおり、単語の途中のどこを分割点とするかは、あらかじめ決めておきます。

(b) 段末、ページ末の調整

 段・ページ分割レベルでの不適切な分割については、「行分割以外の分割」で説明しました。これは、段落そのものの行数を変えるか、段・ページに収める行数を変えることによって、分割点をずらして調整します。

<1>語間の調整によって段落の長さを1行分増やしたり、減らしたりする

 語間のスペースを増減することによって段落の長さを1行分増やしたり減らしたりします。これは、和文組版の禁則処理である「追い込み」と「追い出し」に当たる処理です。

  • Save a line:語間のスペースを詰め、次の行にはみ出ている部分を1行中に収める
  • Make a line:語間のスペースを空けることによって行を延ばし、はみ出した部分を次の行に送る

<2>1ページに入る行を決まった行数より1行増やしたり減らしたりする

 これは、行を延ばしたり縮めたりせずに調整したい場合の方法です。1ページの行数は、版面の縦方向の長さ(Page length)によって決まっています。この行数を1行増やすか減らすことによって分割点を変えることができます。
 たとえば、ページの第1行がwidowになるので、その1行を前のページに入れてしまったほうがよい場合があります。その時は、ページの行数を1行増やすことで widow を前のページに収めます。逆に、ページの最終行が orphanになる場合は、そのページの行数を1行減らし、次のページにその行を送ります。

 このようにして、widowやorphanをなくすことができます。この方法は、行を延ばしたり縮めたりすることにより、ハイフネーションのやり直しが必要になるなどの面倒を避けるために使うことができます。ただ、1ページ行数を変える場合、見開き2ページでは行数を同じにし、版面の長さを揃える必要があります。

<3>見出しの前後にとったスペースの量を増減する

 見出しの前後には、見出しを強調するためにとったスペースがあります。このスペースの量を増やしたり減らしたりすることによって、(b)と同じに1ページに収める行数を変えることができます。

<4>オックスフォード・シカゴ共通ルール一覧

<文章の組み方に関する一般的ルール>

欧文文字の特徴

  • 文字の幅(大きさ) :プロポーショナル
  • 字送り:プロポーショナル
  • 字間:カーニング
  • 文字の揃え:ベースライン
  • 文字の種類:1フォントにつき通常5種類のアルファベットを含む

スペーシング

  • 語間:語間のスペースは1emの3分の1を基本とする
  • 字間:基本的に字間にはスペースを加えない
  • インデント:インデントはemまたはen単位で行う

行分割

  • 語の分割3行以上続けてハイフネーションしてはならない
    右ページの最終行をハイフンで終わってはならない

行分割以外の分割

  • 不適切な分割を避ける
    • 孤立行(widow,orphan)
    • 右ページの最終行でのハイフネーション
    • 段またはページの先頭の空白行
    • 本文参照箇所と別のページから開始する脚注

<本文以外のものに関するルール>

  • 引用本文中に入れる場合(引用符が必要。本文と同じ大きさの活字を使う)
    本文とは別の行で組む場合(引用符は不要。本文より小さい活字を使う)
  • 本文の参照箇所と近いところに配置
    全面が図版のページでは、柱とページ番号を省略する
  • 表の縦罫は省略する
    表を横向きにする場合は、表の頭を左に向けて配置する
    複数ページに渡る表では、列見出しをページごとに入れる
    複数ページに渡る横向きの表では、列見出しを左ページにのみ入れる
  • 脚注本文より小さい文字を使う
    参照箇所と同じページから開始する
    本文と脚注との間は空白行か罫で区切る
  • 索引本文より小さい文字を使う
    右ページから開始
    2段組み
    Flush−and−hang スタイル

調整のための処理

  • 行末の調整
    • (a) 語間のスペース量を増減して調整する
    • (b) 語の分割(ハイフネーション)を行う
  • 段末、ページ末の調整
    • (a) 語間の調整によって段落の長さを1行分増やしたり、減らしたりする
    • (b) 1ページの行数を決まった行数より1行増やしたり減らしたりする
    • (c) 見出しの前後にとったスペースの量を増減する

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