2.1.3. DSSSLの活用事例

 DSSSLの活用事例をご紹介します。
 DSSSLの活用の目的は、SGML文書を読みやすい様式に変換することです。
 DSSSLはSGML文書を自動組版するために予めスタイル言語でフォーマット処理を記述しておくことができます。この予め記述したプグラムによって処理することにより、人手でフォーマット処理する場合に比較して約20倍程度のコスト削減につながります。

(a) 情報公開システムへの組込み事例

 日本でも官公庁が推進し、国際社会で求められている情報公開システムは、膨大な情報量と必要な出力帳票の多様性がシステムの特徴になります。
 SGML文書として保存されている文書を様々な用途に応じた出力様式に整えるため、予め数多くの出力のスタイルをモデル化し、DSSSLスタイル言語でフォーマットを指定し記述しておきます。
 ここでは、次のようなことに注意します。

  • DTD(文書型定義)を多用途で使えるように作成しておくこと。
  • SGML文書で使われる外部参照ファイルの形式を調査しておくこと。
  • DSSSLスタイル記述をモジュール化し、保守しやすくしておくこと。

今後、ますます、このような用途でDSSSLが使われることは多くなると思います。

(b) データベースシステムとの協調事例

 企業における情報管理の重要性は言うまでもないことです。
 常に競争状態に置かれているか、コスト低減を求められているか、あるいは少しでも業務効率を良くするためにしのぎを削り合う企業においては、基幹データベースの活用は死活問題です。
 せっかく貯えられた基幹データベースの情報も貯えられているだけでは、企業活動に活かすことはできません。企業活動では、データベースから検索できるというだけでは不十分です。基幹データベースの情報を即座に読みやすい文書で配布する必要があります。DSSSL処理系をデータベースシステムに組み込んでシステム構築することにより、データベースの複合や多様なデータ構造も読みやすく自動的にレイアウトして、ネットワーク上で配布するまでのコストを大幅に下げることができます。
 ここでは次のようなことに注意します。

  • 旧来のスタイル様式にはこだわらず、読みやすく配置できるフォーマットを選択すること。
  • 罫線や箱を多用したスタイルを避けること。

(c) マニュアルの自動組版システムの実証

 情報産業においても膨大なマニュアルと頻繁にある改訂を管理することは、容易ではありません。
 情報産業で作成されるマニュアルでは特に目次や索引を作成することをはじめ、複数巻にわたるクロスリファレンスを自動的に作成することが求められます。
 DSSSL処理系を活用した自動組版システムによって、マニュアルを作成する場合には、従来の組版ソフトでは2 3時間かかっていたものをDSSSLを利用してもっと短い時間でできるように求められています。
 ここでは次のようなことに注意します。

  • SGML文書が複数の副文書に分けられているので版管理をしっかり行うこと。
  • 改訂が頻繁に発生するのでDTDの保守とDSSSLスタイル記述の保守を連携すること。

(d) 対話型電子技術マニュアル(IETM)

 対話型電子技術マニュアル(IETM)は、アメリカ軍の規格であるMIL規格で提唱された電子化された技術マニュアルです。利用のレベルが何段階かに分けて提唱されていますが、対話型電子技術マニュアル(IETM)は、SGML/HyTime/DSSSLの規格体系で構成することが求められています。
 対話型電子技術マニュアル(IETM)利用者の検索要求に対して必要不可欠な情報と注意すべき関連情報とを状況に応じて限られた大きさのなかで読みやすくフォーマットすることが必要になります。また、ユーザの多様な要求に応えて読みやすい文書をフォーマットするためには、DSSSL処理系を用いて予めフォーマットを記述し、ユーザが読み間違いをしないように表示することが特に重要になります。
 ここでは次のようなことに注意します。

  • 対話型電子技術マニュアル(IETM)システムはSGML/HyTime/DSSSLで構築すること。
  • 検索は、SDQL(標準文書照会言語)を使うこと。
  • 検索要求も保存し、誰がいつ何をどれくらいどこで検索し閲覧したかを管理すること。
  • 文書と参照文書の改訂については、特に利用者に注意を促す仕組みを作っておくこと。

 ここであげた活用の事例は諸般の事情により、やや具体性を欠きますが、DSSSLの活用範囲は今後ますます広がるものと予想されます。
 また、様々なシステムやアプリケーションに組み込まれて見えないところで活躍するDSSSL処理系が増えるものと予測されます。

<<prev      next>>