4.2.1. 欧文との混色に由来する特徴

 文書の種類にもよりますが、現在の日本語の文章には欧文が混ざることが多くなっています。欧文との混植によって発生した和文組版の特徴を説明します。

(a) 特徴

<1>2つの表記方向

 日本語の表記には縦書きと横書きの2種類があります。したがって組版にも縦組みと横組みがあります。
 表記方向によってテキストの配置の仕方が異なるため、版面の枠組みも異なります。行長は、縦組みの場合は版面の高さによって、横組みの場合は版面の幅によって決まります。縦組みと横組みとでは、段の配置の仕方も異なります。

 文字も縦組み用と横組み用で使いわける必要があります。かっこや音引きなどの向きが縦と横で異なるためです。

<2>2つの表記法

 複数の表記法が混在しているということが日本語の大きな特色です。漢字、ひらがな、カタカナという表記法が混ざっている場合は、和文文字のみが使われるので組版上の問題にはなりません。問題になるのは、欧文文字を使う表記法が混ざる場合です。
 和文に欧文(数字や記号も含む)という表記法が混ざる場合は、欧文文字が使われます。欧文文字は、欧文組版のための文字なので、和文文字とは扱い方が違います。これについては特徴3で詳しく説明します。
 欧文文字を使う際には、欧文組版ルールにも対応する必要があります。

<3>2種類の文字

 和文組版で使われる文字は2種類あります。「組版の概念」で挙げたそれぞれの特徴を以下にまとめました。

<3-1>和文文字

  • 字の大きさ:全角(文字が全て同じ大きさの正方形の枠内に入っている)
  • 字送り:一定量(モノスペース)
  • 字間:一定量(字送りによって決まる)
  • 1行ごとの文字の揃え:行の中心線(センターライン)を基準とする

<3-2>欧文文字

  • 字の大きさ:プロポーショナル(文字によって大きさが異なる)
  • 字送り:プロポーショナル(文字の大きさによって送り量が異なる)
  • 字間:カーニング(文字と文字の組合せに応じて詰める)
  • 1行ごとの文字の揃え:ベースラインを基準とする

 最近の組版システムには欧文用のDTPシステムを元にしたものが多いので、和文文字もプロポーショナルやベースラインで扱う傾向があります。特に横組みは、縦組みよりも欧文との混植になる場合が多いので、組版の仕方も欧文寄りになっています。

<3-3>「ページネーション・マニュアル」の欧文文字に関するルール

  • 和文中の欧文・洋数字は、欧文書体を使う
  • 縦組みでは全角組み、横組みではプロポーショナル組みを推奨
  • 縦組みではセンターライン、横組みではベースラインで文字を揃える
  • 欧文の語間は、文字サイズの25~30%を基本とし、ケースに応じて±5%とする
  • 欧文の字間はゼロとする
  • 和文とローマ字・洋数字との間は、全角送りの場合は15%、プロポーショナル送りの場合は10%あける
  • 欧文は、ハイフネーション改行をする

<4>2つの基準線

 欧文では1行ごとの文字の揃えはベースラインという仮想の線を基準とします。それに対し、和文では行の中心線(センターライン)で文字を揃えます。そのため、和欧混植にすると和文と欧文が揃っていないように見えることがあります。
 DTPシステムの中には、欧文文字のベースラインを上下、または左右に動かすことによって和文と欧文を揃えるものがあります。これをベースラインシフトと呼びます。また、ベースライン揃えの和文文字を使うシステムもあります。

(b) 具体例

 以上に挙げた特徴1から4の具体例として、次のようなものがあります。

<1>横組みで和文中に欧文を入れる場合

    ・和文文字が中心線揃えの場合は、欧文文字のベースラインを上下して揃える
    ・和文文字にもベースラインがある場合はベースラインで揃える
    ・和文と欧文の間のスペース
  • 「行組版法」四分アキ
  • 「ページネーション」本文が全角送りの場合は15 (六分)空ける
    プロポーショナル送りの場合は10 空ける

<2>縦組みで、欧文を横書きのまま縦方向に配置する場合

  • 和文文字は行の中心線で揃える
  • 和文と欧文の揃えは、欧文文字のベースラインを左右に動かして行う
  • 和文と欧文の間のスペースは横組みと同じ

<3>縦組みで、欧文(略語などの短い語)を縦書きにして配置する場合

  • 欧文文字でなく、和文文字の全角文字を使う
  • 和文との間のスペースはなし(ベタ組み)

<4>縦組みで、複数の洋数字や単位記号を横書きのまま横方向に配置する場合(縦中横)

  • 文字は欧文文字を使う
  • 和文との間のスペースはなし(ベタ組み)

 これは、年を元号で表す時や、単位付きの数字などを縦書き文中に入れる時などに使います。

<<prev      next>>