6.3. DSSSLの課題と将来の展望

 DSSSLの課題の第一は、DSSSL規格の不備を整備し、最新の市場動向を反映し、先進的な技術を応用して、国際社会に大いに貢献できる規格として完成することです。

 

 DSSSL規格には、規格書に規定された仕様と処理系依存とされている仕様の二つがあります。処理系依存とされている仕様には膨大な検討項目が含まれています。規格でも規定すべきことがまだたくさんあります。
 DSSSLは日本語の組版規則に完全に対応しているわけではありませんが、非西欧の国の組版規則としてはよく対応できている方であると考えて良いと思います。今後は規格に入れる必要のある日本語文書のための組版規則をISOに提議していく必要があると思います。また、世界にとって有益な組版規則ももっと盛り込む必要があります。
 組版規則については様々な考え方が存在し、簡単に決められるものではありませんが、DSSSL規格のうちで組版概念の集大成である流し込みオブジェクトクラスは、もっと、すっきりした階層とまとめ方ができると思います。
 DSSSLが採用しているScheme言語は、非常に面白い言語ですが、一般にはほとんど知られていません。CommonLispやML系の言語を採用していたとしても一般への普及は難しかったと思われます。一般によく知られている言語ではなくScheme言語を選んだという時点でDSSSLは独特の潜在力をもつことになりました。将来、DSSSLの処理系がJava言語やオブジェクト指向データベースとのインターフェイスを備える時代になれば、また、大きな活用への途が開けるかもしれません。
 DSSSLのもつグローブも大きな潜在力を秘めています。グローブの特性集合のすべてにも対応していく必要があるでしょう。
 本書ではページモデルや段モデルについて解説していますが、現実のDSSSL処理系でこれらのモデルに対応しているものはありません。これらへの対応も将来に望まれることです。
 本書ではほとんど触れていませんが、オンラインの規格は現実に合わせて、まとめる必要があります。
 簡単に使いこなせるDSSSLライブラリの整備がさらに必要です。また、将来は、DSSSLの記述がWYSIWYGで確認できるようなアプリケーションの登場が望まれます。

 DSSSLを皆が使いこなすようになるのは、まだ、先のことかもしれません。但し、先駆者たちの努力が実り徐々にではありますが確実にDSSSLは威力を発揮しはじめました。DSSSLの処理系に世界の組版規則が完全に包含される時を待望したいものです。

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