1.2.4. 国際規格としてのDSSSL

 
DSSSL(文書スタイル意味指定言語)は、前述してきたように、SGML/HyTime/DSSSLという国際規格体系のなかで成立しています。このような国際規格と呼ばれる規格は、どのように成立するものなのでしょうか。
 国際標準規格を制定しているのは、ISO( International Organization for Standardization )、即ち、国際標準化機構です。ISOは、1つの政府(国家)に1つのISOの代表(機関)を置いています。そして、日本、アメリカ合衆国、フランス、ドイツ、英国などの諸国家が一票の議決権をそれぞれ持っています。日本では、ISOの代表機関として、日本規格協会があたっています。
 ISOには、次のような委員会があります。

  • JTC 合同技術委員会( Joint Technical Committee )
  • TC 技術委員会( Technical Committee )
  • SC 副委員会( Sub Committee )
  • WG 作業委員会( Working Group )

これらの委員会で国際規格の提案が検討され、投票による承認を経て、国際規格として制定されます。
 ISOのTC(技術委員会)は、2,850程が存在しています。また、Expert(熟練専門家)は、30,000名程が活動しています。
 ISOの活動資金は、80%が加盟者 ( member ) の出資で、20%が出版物 ( publication ) の販売利益で賄われています。ISOは、1947年に発足し、1997年には創立50周年を迎えています。1999年3月現在、日本も理事会メンバー18か国の内の一つとして、ISOへの貢献を続けています。
 ISOの活動方針は次のようなものです。

  • Consensus(意見の一致)
  • Industry−wide(産業全般)
  • Voluntary(自由意志)

 少し理想が高いようにも思えますが、国際機関としてのISOは、世界の産業規格に大きな影響を与えています。最近では、情報技術に代表される技術開発の高速度化によって、情報技術(IT)の活用や規格開発手続きの迅速化および簡単に発行できる標準報告(TR)などが求められるようになり、対応が検討されるようになりました。
 ISOで国際規格が制定されるまでの手続きを単純化して見てみます。

  1. Proposal stage 「提案」
     新しい標準規格(NP)が提案されました。

  2. Preparatory stage 「準備」
     TC/SC技術委員会を編成し、議長を選出します。
     この段階でWorking DRAFTをDRAFT(提案)にまとめます。

  3. Committee stage 「委員会」
     専門委員会は、DRAFT(提案)を DRAFT International Standard(国際標準提案)として、まとめ上げます。

  4. Enquiry stage 「調査」
     DIS ( DRAFT International Standard ) 即ち、国際標準提案を公開し、各政府により5ヶ月間の審査を行います。最終投票を行い、FINALとして承認されたものがFDISとなり、正式な国際規格として登録されます。

  5. Publication 「出版」
     まとまった国際規格は、出版され、配付されます。

  6. Review 「再審査」
     技術や社会の発展に対応するためにISOへ再審査を要求することもできます。

 ISOは、特にIEC ( International Engineering Committee ) すなわち、国際電気会議のような非政府の組織やITU ( International Telecommunication Union )などの通信技術に関連する団体とも連携をとりつつ、相互に強い関連をもって国際規格を制定しつつあります。
 WTO ( World Trade Organization )のように国際貿易の立場からもISOのような国際標準規格というものを強く推賞し、市場浸透を求める動きもあります。
 最近の話題を集めているW3C ( World Wide Web Consortium )は、企業の加盟において成り立っている協議会です。W3Cは、インターネットの普及とともに一般の注意と感心を引き付けることになりました。が、Netscape社とMicrosoft 社が熾烈な競争を演じたこともあり、とても躍動的な反面、企業の力の論理が押し通っているような印象を受けます。
 「ISO/IEC」は緊密な連携のもとに様々な手続きを経て、DSSSLを国際標準規格として、まとめ上げ、世界の合意のもとに制定し、そして、我々の未来を拓きました。
 今後のめざすべき方向の一つは、DSSSLを含むグローバルスタンダードの世界なのです。

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