文書の構造を視覚的に表す方法は、構造上の分割点を視覚上の分割点と一致させることです。簡単に言えば、互いに関連のあるもの同士を近づけ、そうでないもの同士は離して配置することです。
(a) 条件4 内容の区切り目
条件4は、内容の区切り目をはっきりさせるということです。互いに関連のあるものを揃えてひとまとめにし、そのまとまりとまとまりの間には空白を入れて区切ります。その例を以下の図に示します。
段落は、複数の行からなるまとまりです。段落と段落の境界をわかりやすくするために、段落の最初の行の頭をインデント(字下げ)する方法がよく使われます。
複数の段落がまとまったものが節です。節の見出しを目立たせることで、節と節の境界が分かりやすくなります。
見出しを目立たせる方法は、フォントの大きさ、太さ、種類などを本文のものと変えることです。また、見出しをインデントまたはアウトデントする方法もあります。見出しを動かさず、本文の行頭をインデントすると、見出しをアウトデントするのと同じ効果が得られます。
節と節の境界をはっきりさせるもう1つの方法は、節と節の間、つまり節見出しの前に空白行をいれることです。これによって、前の節との境界が分かりやすくなります。複数の節がまとまったものが章です。章と章の境界をわかりやすくする方法の1つは、章見出しを目立たせることです。具体的な方法は節見出しと同じです。
もう1つの方法は、改ページです。章を新しいページから開始するという方法が一般的に使われています。改ページといっても、見開きの中で改ページするのと、1枚の紙の表から裏へ改ページするのとでは意味が異なります。これについては条件5を説明するときに触れます。
(b) 条件5 内容のまとまり
条件5は、どこからどこまでがひとまとまりの内容であるかがわかりやすいことです。ひとまとまりの内容は途中で分割しないのが理想的ですが、実際には配置する空間の大きさに限界があるため、分割が生じます。その場合に、どこを分割するかと、分割したものをそれぞれどのように配置するかに注意が必要です。
<1>適切な分割点
条件1で説明したように、紙面には文章を配置するための枠組みが作られています。文章のまとまりがこの枠の中におさまり切らない場合に分割を行います。
分割点として理想的なのは、一連の内容の中にも必ず存在する区切り目の位置です。章の中の分割なら節と節の間、節の中の分割なら段落と段落の間が区切り目になります。
分割によってまとまりの一部が孤立して見えるような場合は、分割点が不適切です。たとえば、ページ末の分割で段落の最後の1行だけが次のページにはみ出してしまうのは、分割点が不適切だと言えます。その場合は、はみ出した1行を前のページに収めるか、または次ページにもう1行を送るなどして孤立をなくします。
また、見出しと本文の間を分割するのは不適切です。見出しが孤立して、見出しと本文とがひとまとまりであることが分かりにくくなるからです。
行分割では1文と1文の間が分割点として理想的ですが、ほとんどの場合に文の途中で分割が生じます。文の途中でも、読みやすさを損なわない箇所を分割点とします。
行分割の分割点の決定については規則があり、和文組版でいう行末禁則と行頭禁則がそれです。これは和文組版の項で詳しく述べます。欧文組版にはこのような禁則はなく、代わりに語の分割に関する規則があります。
欧文では和文と違い、語の分割は基本的に避けることになっています。分割点は通常は語と語の間にあります。空間の限界上どうしても必要な場合にのみ、語の途中を分割します。その場合、語の中であらかじめ分割点と決められている点にハイフンを置いて分割します。これをハイフネーションといいます。
<2>適切な配置
1つのまとまりを分割した場合、分割したものの前の部分と後の部分を、互いになるべく近い場所に配置する必要があります。
ハイフネーションでは、分割した語の前の部分と後の部分を離して配置するのは適切ではありません。たとえば、語を一枚の紙の表ページと裏ページに分割して配置するのは不適切です。それに比べれば、見開きの左ページと右ページに分割するほうが適切です。両方とも改ページによる分割ですが、後者は見開きで1つの視野に入るのに対し、前者は1つの視野には入らないため、前者のほうが視覚的に強い分割といえます。同じ改ページといってもこの2つは違うので注意が必要です。
<3>適切な分割のための調整
分割によってどこからどこまでが1つのまとまりであるかがわかりにくくなるのは、分割点や配置が不適切だからです。適切にするためには、字間、語間、行間などのスペースを調整します。不適切な分割を避けるためにスペースを詰めて調整することを追い込みといい、スペースを広げて調整することを追い出しといいます。
(c) 条件6 内容の関連
条件6は、ある内容のまとまりと別のまとまりとに関連があるとき、その関連がわかりやすいことです。
たとえば、本文とそれを説明する図、または、本文とそれを補足する注などがこれに当たります。互いに関連するものは、なるべく近くに配置することによって、その2つに関連があることが分かりやすくなります。
関連のあるものがそれぞれ別のページにわかれてしまうことは避けなければなりません。たとえば、脚注は参照する本文と同じページから開始する必要があります。脚注の文が次のページにわたっても構いませんが、はじまりは同じページに置かなければなりません。別のページに置くと、両者の関連がわかりにくくなってしまうからです。
実際に配置するときには、関連のあるまとまり同士を合わせて1つのまとまりと考えたり、同期をとったりして処理することになります。