6.1.1. Jade

 James Clark氏が作ったDSSSL処理系です。SGML文書とDSSSL指定を入力すると、SGML文書をそのDSSSL指定に従って処理して出力します。SGML文書の解析には内蔵のSPを使います。

<Jadeの構成要素>

1. SP API(SGML文書のパース、ENTITYの管理などをつかさどる部分)

 SGML文書を解析・検証し、ESISとして出力します。

2. グローブAPI(SGMLプロパティセットの一部であるESISへのインターフェイス)

 ESISからグローブを生成します。

3. スタイル言語API(スタイルエンジン)

 式言語スクリプトを解析、実行してグローブから流し込みオブジェクト木を生成します。

4. 流し込みオブジェクトバックエンド

 流し込みオブジェクト木をフォーマット言語または組版言語(RTF,HTML,MIF,TeXなど)に変換します。

 Jadeには以下の5つの出力形式のバックエンドが含まれています。

  • XML(FOTによる表現)
  • RTF(MS−Wordの形式)
  • TeX
  • MIF(Maker Interchange Format) (バックエンドはあるが、−t オプションで指定できない)
  • SGML(FOTからSGMLを生成。SGML/SGMLまたはSGML/XMLの変換に使う)

 JadeはSPと同じくフリーウェアであり、以下の場所からダウンロードできます。現在の最新版は1.2.1です。

http://www.jclark.com/jade/#getting

使用環境: Windows95, WindowsNT, Win32(Microsoft Visual C++ 6.0 ),
      UNIX(gcc2.7.2, gcc 2.8.1, egcs 1.0.2)

 Windows 95とWindows NTのみにバイナリがあります。
 バイナリはダウンロードしていずれかのディレクトリに展開すればインストールが完了します。
 ソースコード(C++)からのインストールはJadeの付属ドキュメントを参照してください。

JADEの基本的な使い方(UNIXの場合)

<コマンド>

% jade _t 出力形式 _d DSSSLスクリプトファイル名 _o 出力ファイル名 SGMLファイル名

<オプション>

-d DSSSLスクリプトファイル名

 スタイル指定、または変換指定を記述したファイル名を指定します。指定しない場合、SGMLファイル名に.dslの拡張子のついたファイルがあれば、それを読み込みます。

-t 出力形式

 出力形式を指定します。最新版(1.2.1)が対応している出力形式は以下の通りです。

  • fot:流し込みオブジェクト木のXML表現
  • rtf, rtf−95(MS−Word 95に最適化):Microsoft Rich Text Format
  • tex:TeX
  • sgml:SGMLからSGMLへの変換
  • xml:SGMLからXMLへの変換
    • (変換処理にはDSSSL変換言語による記述指定は使えません。)
    • (出力形式を指定しない場合はfotで出力されます。)

-o 出力ファイル名

 出力ファイル名を指定しない場合、SGMLファイル名に出力形式の拡張子がついた出力ファイルが自動的に生成されます。

<JADE使用例>

% jade _t rtf _d example.dsl _o example.rft example.sgm

 この使用例はSGML文書(example.sgm)をDSSSLスクリプト(example.dsl)に従って処理し、RTF形式(example.rtf)で出力する場合のものです。

 JADEは手軽にDSSSLを試してみる場合に最適なDSSSL処理系です。
 また、配付や利用の制限もまったくありませんので、自由に使うことができるのも魅力の一つですね。
 作者のJames Clark氏はDSSSL規格を制定する際にもかなり活躍された方です。

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