それでは simple-page-sequence のスタイル指定について見ていきましょう。まず最初に、スタイル指定の対象となる文書を示します(リスト3.1およびリスト3.2)。
リスト3.1 [ article.dtd ]
<!ELEMENT article (title,subtitle?,articleinfo?,section+)> <!ELEMENT articleinfo (author,date)> <!ELEMENT author (firstname,surname)> <!ELEMENT firstname (#PCDATA)> <!ELEMENT surname (#PCDATA)> <!ELEMENT date (year,month,day)> <!ELEMENT year (#PCDATA)> <!ELEMENT month (#PCDATA)> <!ELEMENT day (#PCDATA)> <!ELEMENT title (#PCDATA)> <!ELEMENT subtitle (#PCDATA)> <!ELEMENT section (title,(para|blockquote)+)> <!ELEMENT para (#PCDATA|emphasis)*> <!ELEMENT emphasis (#PCDATA)> <!ELEMENT blockquote (quoteinfo?,para+)> <!ELEMENT quoteinfo (title,author)>
リスト3.2 [ article.xml ]
<?xml version="1.0" encoding="euc-jp"?> <!DOCTYPE article SYSTEM "article.dtd"> <article> <title>文字の不思議</title> <subtitle>ヒエログリフ編</subtitle> <articleinfo> <author> <firstname>Kazutoshi</firstname> <surname>Kubota</surname> </author> <date> <year>2003</year> <month>6</month> <day>27</day> </date> </articleinfo> <section> <title>神の文字ヒエログリフ</title> <para>考古学に興味のない人でも、学校の授業かなにかで一度くらいはヒエログリフ を目にしたことがあるだろう。驚くほどに様式化され、見事なまでに洗練されている、あの絵 文字のことである。古代エジプト人は、<emphasis>トト</emphasis>という名の神がヒエログ リフ(聖刻文字)を発明し、それを人間に授けたと信じていた。絵文字とは思えないほど調和 の取れたあの美しいさまを見れば、彼らがそう信じたのもうなずける話である。 </para> </section> <section> <title>神の文字は権力への道</title> <para>エジプトに限った話ではないが、古代においては文字の読み書きに関する能力 はほとんど権力に直結していた。あれほど複雑な文字を数百文字から数千文字学ぶのである。 私たちが日常的に使っている漢字さえ覚えるには一苦労なのだから、ヒエログリフの習得は輪 をかけて困難であり、その能力を手にしたものは一握りであったろうと推察される。それ故、 記録を残す能力は特権となり、その能力を持つ書記たちは大きな権力を手にしたのである。 </para> <para>もっとも、いつもあの華麗な文字を用いていたというわけではない。日常的な 筆記にはヒエラティック(神官文字)やデモティック(民衆文字)と呼ばれる草書体が用いら れていた。古代エジプト人は、ヒエログリフの前にまずこれらを学んだのである。よし、これ らをどうにか修得し、ヒエログリフを暗記したとしよう。しかし、それだけでは済まないので ある。次の引用がその理由である。</para> <blockquote> <quoteinfo> <title>文字の歴史</title> <author> <firstname>Georges</firstname> <surname>Jean</surname> </author> </quoteinfo> <para>ヒエログリフは原則としては右から左へと読む。ただし人や鳥の絵文字 があった時は、その頭部が向いている方が文頭となる。つまり人や鳥が左に向いている場合は 左から右へ、右に向いている場合は右から左へと読むことになるわけだ。しかし実際にはそれ ほど単純ではない...</para> </blockquote> <para>途中で読む方向が変わるというだけでも、決して単純ではないと思うのだが、 実際には一層複雑であるというのだから、気の遠くなりそうな話である。</para> </section> </article>
第2章で説明したように、スタイル指定はタグ(要素)に対して行ないますから、まずはどのタグを simple-page-sequence に対応させるかを最初に決定します。タグを simple-page-sequence に対応させるというとは、そのタグを起点にページを開始するということです。
リスト3.2の例題文書は、article タグを頂点とする文書構造を持っています。article タグの子要素すべてが表示対象となりますから、単純に考えて article タグを simple-page-sequence に対応させればよいでしょう。この対応関係を表わすスタイル指定を最も単純に書くと次のようになります。
例 3.1
(element article (make simple-page-sequence))
これは、article タグが現われたら simple-page-sequence フロー・オブジェクトを生成する、という以外のことを、すべて simple-page-sequence 自身が持つ初期値に任せてしまう指定です。この初期値のうち、ページサイズの値はプロセッサ依存と規定されています。これでは、DSSSL プロセッサを変更した途端にフォーマット結果が変わってしまうかもしれませんから、もう少し細かく指定した方がよさそうです。では、次に simple-page-sequence の特質について見ていくことにしましょう。